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<<   作成日時 : 2010/09/03 23:53   >>

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今年は高校のPTAの役員をしてるんですけど、今日は文化祭で、朝から働いてきました。
仕事休んで。
16歳〜18歳が千人近く集まったこのエネルギーはすごいね。
発電できるんちゃう?とか思いましたもん。

そんなわけで。
エネルギーでは負けないぞ、と。
今日はこんな本。

私は本を、ミステリーなんかは特に二度読みするのだが、これはあまりの濃さと暑苦しさに、二回読む気になれなかった本である。←(注 思いっきりホメてます。)

『母恋旅烏』 荻原浩 (双葉文庫)

いやーほんとに暑苦しかった。(だからホメてるんだってば)
笑いと涙と、何よりこのパワーはすごい。

花菱一家は、旅回りの大衆演劇を生業としていたが、今は「レンタル家族派遣業」なる怪しい家業を営んでいる。
父・清太郎、母・美穂子、三人の子供・太一、桃代、寛二。
そして桃代の子・珠実。
このレンタル家族は、劇団をやめてからの清太郎の何十番目かの仕事である。
美穂子いわく、「サイコロを振るような人生」。
ハチャメチャでうだつの上がらないダメ親父が家族を巻き込み、「行てまえー」てなもんで、グイグイ道標のない我が道を突き進んでいく。
が、結局どれもうまくいかず、大衆演劇の世界に再び舞い戻るのだが…。

この小説の半分は、次男の寛二の一人称で語られている。寛二は知的障害があるらしく、特殊学級に通っており、17歳なのだが言葉遣いは小学生のようだ。
だが、それがかえって先入観なく物事を見ていて正直で、芝居の場面の説明などは、本当に目の前で見ているような気持ちになって感動する。

さて、一度飛び出した「大柳団之助一座」に舞い戻り、紆余曲折のあげく、崖っぷちで清太郎が一世一代の賭けに出た芝居、「母恋旅烏(ははこいたびがらす)」。
これがすごくいいのよ。
そりゃあまあ、クサイといえばクサイんだけど。
でも、寛二の語り口がすごくいいし、大衆演劇のケレン味たっぷりの化粧や衣装や照明や、大げさなセリフ回しにすっかり引きずり込まれて、清太郎が血まみれで微笑む場面でうるっときてしまったりして。

さて、清太郎が団之助から独立し、「花菱清太郎一座」を旗揚げすることになった。
めでたしめでたし、のはずだったが、なななんと、美穂子さんが家を出て行ってしまう。
なんで !? しかもこのタイミングで !?

家を出ていたもののとりあえず戻ってきた太一と桃子が入り、花菱清太郎劇団のお披露目公演が行われた。
もうこのシーンはねー。涙なしでは読めませんよあーた。
(あたしだけか?)

「四谷怪談」の宙乗りの場面。
お岩役の太一を吊っていた二本のワイヤーが一本切れてしまうのだ。
それに合わせ、太一と伊右衛門役の桂木さんが、台本にはないセリフをしゃべり始めるシーンが、もうすんごく感動!
恨みつらみの四谷怪談が、二人の気転で優しいラストシーンに変わり、客席を感動の渦に巻き込み幕を閉じる。
劇団員が一丸となり、花菱家の子供たちが全員出演したお披露目公演は、大成功をおさめた。

ああ。そうか。これは子供たちの物語だったのだなあと、読み終えて思った。

ダメ父が奮闘してひと花咲かす話でも、父親の素晴らしさを再発見して家族が再生する話でもない。
最後に輝くのは親父ではなく、子供たちなのだ。
出て行った美穂子さんが、結局物語の最後まで帰ってこなかった理由もうなずける。
「お〜い、美穂子〜。帰ってこ〜い。」
と、清太郎が座長挨拶で妻に呼び掛けているのも何だか微笑ましく、それはそれでOKなんじゃないかと思う。
この夫婦はこの夫婦で、モメたりヨリを戻したり勝手に好きにやっとればよいのだ。

歌謡ショーで、寛二が「潮来笠」をモノマネで歌う場面がよかった。

「いままでぼくは人に笑われてばかりいて、それはぼくを馬鹿にして笑っているのだということに、なんとなく気づいていたけれど、舞台の上では違う。舞台の上のぼくを笑ってくれるのは、ぼくのことを少しかもしれないけれど、好きでいてくれるからだ。いまここにぼくがいることを、喜んでくれているからだ。ぼくが生きていることを、ま、ええやんと思ってくれているからだ。」

うるうる。

適材適所に置かれたら、人はこんなにも輝く。
よかったなぁ寛二くん。
清太郎だって、舞台に立つ姿はめちゃカッコいいのだ。

師匠の団之助の、「おめおめとのぉ」というのがおもしろかったなぁ。
この団之助さんのキャラクターはなかなか魅力的だ。
早くから寛二の才能を見抜いて、自分の名前から一文字取って、寛二に芸名をくれるんですよ。
器がでかい。(そしてねちっこい)

あと、桂木さんもいいね。
女形の時に、男っぽい声で「あいよっ」とかいうところとか好きだなぁ。

かくして、演劇の端っこをちょびっとかじったことのある私にとっては、ワクワクドキドキ、笑えて泣けた、すごく楽しい物語なのでありました。

ちょ〜〜ん(拍子木の音)


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